date.2014.12.09 category.
昨日、c:hordのご近所にお住まいの、女性のお客様がふらりとお店を訪ねてくださった。
とても上品な、ご高齢の方。
きっと、沢山の良い物をご覧になって、本物を知っていらっしゃるのだろう。
数ある中から、あまり迷う事無く二枚のラグを選ばれた。
yamodの淡いセピアのビンテージトルクメンと、ダークトーンの礼拝ラグ。
どちらも本当に落ち着いた風格があって素敵な絨緞。
実際に部屋に敷いてみて、どちらが合うか選びたい、とのご要望で、
スタッフとラグを抱えて、お宅へ歩いて伺う。
私は革のサボ履きにキャスケット帽、スタッフは長髪のもじゃもじゃ髭で作業着姿。
先頭に気品溢れるマダム。
ちょっと不思議な3人。。
セキュリティの厳重な近代的な高級マンションのエントランスを抜け、エレベーターへ乗る。
大きな窓からミッドタウンの公園を見下ろす広々とした室内には、そこかしこにアンティークが並ぶ。
西洋の物も東洋の物も入り交じりながら、不思議と全てが調和している。
華美でない本物のアンティーク達は、私が仕事でとり扱うニュアンスの其れとは一線を画すものばかり。
窓際に置かれた木馬は中国の骨董品だろうか、たてがみは本物の馬の毛だ。
ソファセットの下に敷かれた深い藍染めのシルク絨緞が、静かな迫力を醸し出す。
お持ちした二枚の絨緞をお部屋に敷き比べて、それぞれのご説明をする。
静かに耳を傾けてから、すっとトルクメンの方をお選び頂く。
部屋にもお客様にも、本当にぴったりと似合っている。
しっくりきている、というのは正にこういう事だろう。
代金をお預かりし、お茶をごちそうになり、少し他愛も無い世間話をする。
私が手をつけなかったお菓子を、スタッフに持たせてくださった。
ご挨拶をして、部屋を後にする。
「これも何かのご縁ですから、これからも宜しくお願い致します。」
と、我々がエレベーターに乗り込んで扉が閉まる迄、丁寧に見送ってくださった。
淡々として静かだが、ほんわかと優しいひと時。
きっと、あの絨緞をこれからの日々、本当に大切にしてくださるのだろう。
何気ない仕事の一幕だが、なんだかいつまでも記憶に残りそうな出来事。
こういう納品は、何故か忘れられないものだ。