date.2010.11.27 category.ITEM
1900年代初頭のフランス製アームチェアー。
華美な装飾が無いシンプルなフレームの柔らかな流線型が特徴的です。
座り心地も良く、アンティークのニュアンスで内装構成をする美容室のカットチェアーなどとしてもご愛用頂いております。
背面の高さやカーブの具合、トップに余分な彫刻パーツなどが無いなどの条件がちょうど良く、髪を切るお仕事に適している様です。
フランスでの仕入当初の状態はこんな感じ。
張り生地は痛んでしまい、スプリングやクッションなどもへたって潰れています。
少しフレームにもぐらつきが出ています。
しかし、フレームは複雑な三次曲線を描いて近代のリプロダクト製品では表現出来ない趣きがあります。高い技術と贅沢な時間をかけて作られた物が纏う特有の雰囲気があります。アームレストや背面上部にかけてクイっと反り返ったカーブなどは最高に綺麗です。
そしてそして。
カスタム後の状態がこちら!
まずは全体のフレームを組み直して、うっすら木部が見えるブラック塗装をかけ、最後は丁寧にビーズワックスで仕上げ。
スプリングやクッションなどを新しい物に交換してから張り替え。
背面には、クリアの箔が濡れ色をつけクロコ柄を浮かび上がらせた特殊な輸入ベルベットを張り、使用時に摩擦の強くかかる座面とアームレストは黒革で仕上げました。この黒革は、表面に顔料がべったりとのり、わざとらしいシボをプレスした様な一般家具の其れとは異なり、使い込む程に味が出るものです。
一本にまとまった連結鋲で止めるよりも手間がかかるのですが、ハードな印象になり過ぎない様に真鍮鋲は単発で程よい間隔を置いて一発一発手で打ち込んで仕上げていきます。打ち立ての金色の鋲は時が経つと古美色に変化して行き、使い込む程に革は柔らかく馴染んで行きます。
木の上からペンキをベタ塗りするのではなく、黒の染色材で着色しながら彫刻の陰影を強調し、所々に木色が顔を覗かせる様な繊細なタッチで仕上げました。
今回使用した素材や選定した色味は、少し間違えると全体的にハードで下品な印象になりがちな構成ですが。
ベースになっているチェアーのフォルムやディティールの美しさ、一つ一つにかけた素材の上質さ。細かく根気良く積み重ねた手仕事の集積が上品な雰囲気を醸し出しています。
と。
珍しく、我々が手仕事でアンティーク家具に施している手仕事のディティールを語ってみました!
読むの疲れましたかね(笑)
一脚くらい自分で欲しいかも。